所蔵資料の酸性紙問題対策に、脱酸性化処理「ブックキーパー」

地域から受け入れた資料など所蔵資料に、酸性紙が隠れていませんか。
紙資料のうち「酸性紙」は、時間とともに劣化が進行し、紙質によっては粉砕するように脆弱化します。このような酸性紙を、長期的に保存するために有効な資料保存対策「脱酸性化処理」と、脱酸性化処理を手軽に実現できるキハラの「ブックキーパー」、酸性紙をチェックできる「アビィpHペン」をご紹介します。

脱酸性化処理

酸性紙資料の劣化を遅らせるために、紙の酸性をアルカリ物質で中和し、紙を構成している繊維の酸性劣化を抑制させる方法を脱酸性化処理といいます。何もしなければ紙の強度は酸性化などによって徐々に低減し、利用できない状態になります。しかし、脱酸性化処理を行うことによって紙の寿命が3倍~5倍に伸びるといわれており、劣化を長期的に遅らせることができます。脱酸性化処理には、手作業で行う少量脱酸性化処理と、機械で大量に行う大量脱酸性化処理があります。

    酸性紙とは
1850年頃より洋紙の製紙工程で、ロジン(松やに)と紙の繊維をつなぐために硫酸アルミニウム(硫酸バンド)が混ぜられるようになり、硫酸アルミニウムが水分と反応して酸を生じ、酸性の性質をもつ洋紙「酸性紙」が出現します。酸性の性質を持つ洋紙「酸性紙」は徐々に劣化し、場合によっては100年も経たないうちに粉砕するまで脆弱化します。酸性紙でなくても、酸性紙を挟んだままにしておくことで酸が移行して本紙を劣化させることがあります。

現在は、書籍の洋紙のほとんどが酸性紙の3~4倍の寿命を持つといわれる中性紙とされています。国内では明治20(1877)年代から酸性紙(木材パルプ)の生産が徐々に活発化し、中性紙が広く普及するのは1980年代といわれますので、主にこの間の酸性の印刷用紙や新聞用紙が、脱酸性化処理の対象となります。

脱酸性化処理の効果(イメージ)
脱酸性化処理の効果(イメージ)©キハラ株式会社

上図は脱酸性化処理の効果を表しており、例えば現在の紙の強度がAとすると、何もしなければ紙の強度は酸性化などによって徐々に低減し、利用できない状態①に達します。しかし脱酸性化処理を行うことによって、②に至るまで劣化を長期的に遅延させることができます。
一方、既に脆弱化した紙Bに対する効果は限られ、延命効果は③までしかありません。したがって紙が劣化する前、早期の脱酸性化処理がより大きな費用対効果を生みます。

キハラの「ブックキーパー スプレーボトル」

少量脱酸性化処理の方法にも様々ありますが、キハラの「ブックキーパー スプレーボトル」は、手紙やはがき、薄手の冊子などの紙資料を脱酸性化処理することができるスプレーです。1回の処理で効果は持続します。特別な装置を必要とせず、革や布、接着剤といった製本材料を変質させることなく、インクやスタンプを変色させることもありません。

ブックキーパー スプレーボトル 使用イメージ©キハラ株式会社
ブックキーパー スプレーボトル 使用イメージ©キハラ株式会社

動画 スプレーボトル使い方


ブックキーパー脱酸性化処理

大量脱酸性化処理として、キハラで推奨する「ブックキーパー脱酸性化処理」は、米国ピッツバーグに所在するPreservation Technologies L.P.(PTLP)によって開発されました。ブックキーパーなら書籍、手稿、地図、楽譜、パンフレット、新聞などを安全に脱酸性化し、現物資料の寿命を長期にわたって延長します。

ブックキーパー脱酸性化処理 専用のホルダを用いて脱酸性化処理液に浸漬させる
ブックキーパー脱酸性化処理 専用のホルダを用いて脱酸性化処理液に浸漬させる©キハラ株式会社

ブックキーパーは米国議会図書館と緊密に連携して開発された、安全性と有効性において高い基準を満たす唯一の脱酸性化処理技術です。同図書館は過去20年間で500万冊以上の書籍と1,800万件の文書を処理してきました。
現在、ブックキーパーの大量処理工場は世界9ヵ国に設置され、各国の国立機関、大学、その他多くの図書館や文書館で採用されています。

ところでこの紙は酸性紙? ― 酸性紙の簡単な見分け方

「アビィpHペン」は、脱酸性化処理を必要とする酸性紙を選び出すことができます。ペンは一度書き込むと色が消えませんので、貴重書等の場合は注意が必要です。書籍の小口やページの奥など目立たない箇所にできるだけ小さな点を打ち、色をご確認ください。ルーペなどを使用しますと、小さな点でも十分確認できます。紙の地色が影響する場合もありますが、チェックした色は概ね表のような色合いになります。

アビィpHペンの使用方法と色の変化©キハラ株式会社
アビィpHペンの使用方法と色の変化©キハラ株式会社

国立国会図書館の調査(※)などによると、今日ではほとんどの出版物において中性紙が使われています。まずは、対象の紙資料が酸性か中性かを調べることが大切です。
酸性紙の脆弱化を遅らせることができる脱酸性化処理ですが、すでに脆弱化した紙に対する効果は限られていますので、酸性紙の早期発見、早期の脱酸性化処理がより大きな費用対効果を生みます。
(※中性紙使用率調査「国立国会図書館月報」No568 P20-26

製品情報

製品名:ブックキーパー スプレーボトル 150g
製品番号:861-010
(使用枚数:A4判 約25枚)
製品名:ブックキーパー 詰替用 900g
製品番号:861-020
(使用枚数:A4判 約150枚)
〇一般的なインク類に安全に使用できますが、pHの変化に敏感な青写真には変色、退色の可能性があり、利用できません。ジアゾタイプやこんにゃく版もpHの変化に敏感ですので注意が必要です。

製品名:アビィpHペン
製品番号:861-100
〇アビィpHペンは一度書き込むと色が消えませんので、書き込む箇所をご注意の上、ご使用ください。
価格については、キハラホームページ「キハラ図書館用品 総合カタログVOL.91 保存用品」をご覧ください。

商品について、ご購入依頼、ご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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